AGORAというコワーキングスペースにて「スモールビジネスにおけるAI技術の活用」というテーマでセミナーを開催しました。今回は大学教員の先生をお招きし、AI技術の基礎から応用まで、特に小規模ビジネスがどのようにAIを活用できるかを中心に、わかりやすく解説していただきました。
本記事では、セミナーの内容をダイジェスト形式でまとめています。「AIって難しそう」「小さなビジネスでも使いこなせるの?」と思われている方こそ必見の内容です。ぜひ最後までご覧ください。

写真はBinaTerra運営
目次
- AIの種類:判別系と生成系
- 判別系AIのすごさと事例
- 生成系AIの概要とビジネス応用
- 学習データと法律・権利の問題
- スモールビジネスにおけるAI活用のポイント
- Q&A 〜 参加者とのやりとり
1. AIの種類:判別系と生成系
まず先生は、AIを大きく「判別系AI」と「生成系AI」の2つに分類して解説してくださいました。
- 判別系AI
画像や音声などのデータから「これは何か」「どんな状態か」を見分けたり、分類や予測を行うのが得意。例えば、レントゲン写真からがん細胞を検出したり、イラストの上手い部分・下手な部分をAIに塗り分けさせたりすることができる。 - 生成系AI
テキストや画像を“新しく生み出す”ことに長けたAI。ChatGPTなどが代表的で、文章生成や画像生成、さらにはプログラムコードの生成などもこなせる。
先生いわく、この2つの技術は2010年代以降に急速に進歩し、特に判別系AIは2015年頃にはほぼ成熟しているとのこと。生成系AIも近年のモデルでは、非常に自然な文章や画像を作り出すようになっています。
2. 判別系AIのすごさと事例
レントゲン画像での病気判別
アメリカの研究機関などが公開している大規模な医療用データセットを使い、ディープラーニングで「画像のどこに病変があるか」を塗り分ける実験が紹介されました。専門知識がなくても、誰でもツールを使えば比較的簡単に学習データを取り込み、病変部位を示すモデルを作り出せるそうです。
「高校生でも作れるレベル」と先生がおっしゃっていたのは、まさに今のAIの進歩を象徴しています。
イラストの上手い・下手をAIが自動判別
学生が描いたイラストを「上手い」「下手」で塗り分ける事例も紹介されました。SNS上からイラストを大量に集めて学習させることで、AIが“上手い部分”を緑、“手抜き部分”を赤に塗り分けてくれる。人間の目線では捉えにくいパターンを機械的に捉えることで、改善点を可視化するような使い方が可能になります。
音声認識
音声テキスト化のAI Whisperによる、誤認識率4.26%程度の音声認識モデルを作れた事例にも言及されていました。ここでも専門知識がさほどなくても、高精度の認識が可能になっているとのこと。
3. 生成系AIの概要とビジネス応用
生成系AIとは
画像・文章・プログラムコードなどを“新しく生み出す”力を持ったAI。
- 文章生成AI:ChatGPTが代表例。文章の要約・翻訳・問いかけへの回答などに活用できる。
- 画像生成AI:Stable Diffusion、Midjourneyなど。指定したプロンプトに応じてイラストや写真風画像を生成。
- 3D生成や動画生成AIも徐々に台頭し、**「すべてを生成できるAI」**へと進化中。
生成の仕組み 〜「トランスフォーマー」と「単語の距離」〜
文章生成AIは膨大な文章データを読み込んだうえで、**「単語と単語の距離」「概念の近さ」**を学習しています。
- 「東京」と「観光」が近いと、東京の観光に関する文脈を形成
- 「東京」と「政治」の距離が近いと、政治の中心としての東京の文脈になる
Googleが開発した「トランスフォーマー」という仕組みによって**単語間のベクトル(眼差し)**を学習し、翻訳や要約の性能を飛躍的に向上させました。その成果がさらに発展して、ChatGPTなどの高度な文章生成につながったという歴史があります。
ビジネスでの生成系AI活用例
- 議事録・要約作成:長い会議の内容を瞬時に要約
- 顧客対応のチャットボット:ローカルで学習させることで機密情報の漏えいを防ぐ
- マーケティング資料やブログ記事の作成:Web上の情報を参照しながら自動生成
- プログラムの自動生成・修正:プログラミング初心者でも雛形コードを作れる
ポイントは「完全に正確」ではない可能性もあるため、繰り返しのやりとり(対話)で精度を高めていくということ。「1回や2回の問い合わせだけで完璧な答えが返ってくるわけではない」と強調していました。
4. 学習データと法律・権利の問題
判別系は「学習データの利用」に問題なし
AIがデータを判別・分類する場合、その学習データをどこから持ってきても、比較的著作権侵害になりづらい。法的にも問題になりにくく、多くのデータセットが公開されています。
生成系は「二次利用」の扱いに注意
生成系AIの場合、元データ(学習データ)を元に作られた成果物が「二次利用」と見なされる場合があります。文化庁から「生成物は二次利用に当たる」という見解が出ていることもあり、著作権の観点で注意が必要です。
- 新聞社や出版者が「自分たちのテキストを勝手に学習の材料にしないでほしい」と主張するケースがある。
- 今後も法整備やガイドラインが変わる可能性が高い。
先生は「判別系は安心して導入できるが、生成系はうまく使うにはまだグレーな部分もある」とまとめておられました。
5. スモールビジネスにおけるAI活用のポイント
1)どんなAIを使いたいかを決める
- 判別系が向いているのか、生成系が向いているのか。事業内容や目的によって異なるため最初に明確化しましょう。
2)適切なサービス・モデルを選ぶ
- さまざまなAIが登場
- パブリックなAIか、ローカルに構築するAI(LM Studioなど)かを検討する
- アウトプットの品質や日本語の得意/不得意を見極める(3か月おきに情勢が激変する可能性もあるとのこと)
3)プロンプト設計(対話設計)を丁寧に
- 一度聞いただけで完璧な回答はなかなか得られない
- 何度か対話を重ねて、精度を高めていく。相手(AI)の出力の癖を把握し、プロンプトを微調整する。
4)ノーコード・ローコードでアプリを作る
- ノーコード開発と生成系AIの併用で、市民開発(シチズンデベロッパー)が進み、プログラミング未経験者でもプロトタイプが作れる時代に。
- ただし、基本的なPython知識などがあると一層スムーズ。
5)機密情報・ナレッジは守る
- オンプレミス(LM Studioなどを用いて、ローカルPCや自社サーバー内でモデルを動かす)なら、外部に情報が漏れづらい
- 社内ドキュメントや独自データをAIに学習させたい場合は、なるべく閉じた環境でやることが望ましい
6. Q&A 〜 参加者とのやりとり
最後のQ&Aでは、こんな質問が挙がりました。
Q1. 「プログラム未経験だけど、自分専用AIは作れるの?」
A. 十分可能です!
- 最近は「ノーコード」「ローコード」ツールや、AIがコードを提案してくれるサービスが充実
- Pythonなどがわかればベストだが、AIにコードを書いてもらい“つなぎ合わせる”だけでも試作レベルのものは作れる
Q2. 「Perplexityとジェミニリサーチ(Gemini Deep Research)の違いは?」
A. どちらも文章生成AIですが、得意分野がやや異なります。
- Perplexity:プログラムコードの生成や学習、サンプルを提案してくれる性能が高い
- ジェミニリサーチ(Deep Research):まずはWeb検索を自動で行い、複数のサイトから得た情報を引用しつつ要約・整理するのが得意
- どちらも有料プラン(約20ドル)を活用すると、調べ物から文章作成まで一気通貫でこなせる強力なアシスタントになります
Q3. 「自社で機密情報を扱う場合はどうすれば?」
A. オンプレミスで動かすAIが有力です。
- 「LM Studio」などを使えば、PC内にAIモデルを落として動かせる
- 機密情報や社内ナレッジをローカル環境だけでやり取りしながら、文章やチャットボットを生成可能
まとめ
今回のセミナーでは、AI技術はビジネス規模に関係なく導入可能であり、特にスモールビジネスや個人事業主の方でも活用の幅が広いことがわかりました。
- 判別系AIは既に成熟しており、商品検品や画像解析などで即戦力となる可能性が高い。
- 生成系AIは文章要約、画像生成、プログラム作成など、一人で何役もこなすデジタルアシスタントに。
- 著作権・機密情報の問題はまだグレーな部分もあるので注意が必要。
- 自分専用のAIを作るハードルも下がっており、ノーコード・ローコードで十分アプリ開発が可能に。
「何から始めればいいの?」と迷っている方は、まずは自分のビジネス課題を洗い出し、判別系か生成系かを見極めることがおすすめ。そこから使えそうなツールをいろいろ試し、プロンプトを工夫して徐々に成果を出していくのが近道だと感じました。